みなさん「レスター優勝の奇跡」を覚えていますか?
当時多くのプレミアリーグファンを熱狂させ、ベッターにロマンを与えたレスターの優勝への物語。弱小と言われたチームがリーグ優勝までたどり着いた経緯、そして当時のありえないオッズ。この記事でもう1度振り替えってみましょう!
レスター・シティとは、イギリスのプレミアリーグに属するクラブチームであり、2015/16シーズンに初めてリーグ優勝を達成しました。当時のレスターは弱小チームとして知られており、優勝どころか残留争いをしているほど実力が他のチームに劣っていたのです。そんなチームが多くの人の予想に反して優勝したことで大きな話題となり、各メディアから「レスターの奇跡」といわれるようになったのです。
奇跡が生まれた瞬間!当時のレスターファンのリアクション
ここで、優勝はまずないと言われていたレスターがなぜ優勝できたのでしょうか?岡崎慎司がレスターに移籍した所から優勝するまでの流れを振り返ってみましょう。
2015年6月27日、岡崎慎司がレスター・シティへと移籍。
当時ドイツのブンデスリーガで活躍していた岡崎の移籍に対する海外の反応はとてもポジティブなものであり、特にレスターからは喜びの声があがりました。
ちなみに、移籍金は700万ポンド(12.8億円)でありレスター史上最高額での移籍となりました。このことからもどれだけ岡崎が期待されていたかがわかるでしょう。
このころのレスターはとても好調とは言えず、下馬評では残留争いが予想されているほどでした。地元の記事でもレスターの戦力不足が指摘されており、以下のような厳しいコメントが多くみられるほどでした
『このチームが現在の残留争いゾーンからステップアップして、トップ10入りを狙えるところまで成長するためには、何よりも戦力強化のための投資が必要だ。』
これらから、いかにレスターが期待されていなかったかがわかることでしょう。実際にレスター自身も当初のチームの目標はあくまでリーグ残留であり、勝ち点の獲得目標も40程度としていました。つまり、誰もレスターの優勝に期待していなかったのです。
レスターが不調のまま2015-16シーズンが開幕します。開幕早々連敗が続くのではないかと多くの人が悲観的な見方をしている中、レスターは何と絶好調。
ジェイミー・ヴァーディと岡崎の2人のトップ選手がチームをリードし、勝利に導いていきます。特にジェイミー・ヴァーディはルート・ファン・ニステルローイによる2003年のリーグ戦連続ゴール記録(10試合連続)を抜いて11試合連続ゴールを達成するなど、誰もが期待していなかった大活躍を見せます。そして、チームは順調に勝ち点を増やしてき、前半戦をアーセナルに次ぐ2位で終えます。
後半戦もレスターの活躍は続き、さっそく5連勝を記録。そして、2016年4月10日にサンダーランドに2-0で勝利したことでクラブ初となるUEFAチャンピオンズリーグの出場権獲得を確実なものとします。
その後、2016年5月2日、優勝を最後まで争ったトッテナムがチェルシーに引き分けたことによって、レスターの優勝が確定します。これはクラブ創設132年目にして、プレミアリーグでは1978年のノッティンガム・フォレスト以来38年ぶりとなる初優勝となりました。
プレミアリーグの底辺とも言われていたようなチームがまさかの優勝をしてしまい、各メディアで「奇跡」と称えられたのです。
*このレスターの優勝はスポーツ史に残る大きな出来事であり、映画化もしています。実話を基にしたボクシング映画「ザ・ファイター」でアカデミー賞にノミネートされた脚本家チームのポール・タマシーとエリック・ジョンソン、サッカー映画「GOAL!」の脚本家エイドリアン・ブッチャートが共同で脚本を執筆しました。
多くの人の予想に反して優勝してしまったレスター。では、この時何倍のオッズが設定されていたのでしょうか?
なんとこの時イギリスのブックメーカーが設定したオッズが5000倍!
つまり、1ドルを賭けていた場合5000ドルの配当を受け取ることができたのです。5000倍といってもどれくらいすごい数字かはなかなかイメージができないでしょう。そのため、他のオッズを例に挙げてみましょう。
ブックメーカーではいろいろなオッズが提供されており、中にはユニークなものがたくさんあります。例えば「ネッシーが実在するか」という賭けには501倍のオッズ、「エルビス・プレスリーが現在も在命しているか」には2001倍のオッズが設定されたことがありました。これらはいずれも絶対にありえない、というようなことですよね!
しかし、これらの「ありえない事実」よりも、レスターの優勝には高いオッズが設定されていたのです。つまり、ブックメーカーはレスターが優勝するということは100%ないと確信していたともいえるのです。
このような高いオッズを設定してしまったブックメーカーは、もちろん提示した通りのオッズに基づいて払い戻しをしなければいけません。イギリス最大のブックメーカーであるベット365の広報担当のスティーブ・フリース氏は当時『全くもって、予想すらしなかった。うちはレスター優勝に関して、1000-1以上の賭けを619件受けており、その払い戻しは300万ポンド(約4億8000万円)を優に超えている』とコメントしています。
他にも同じくイギリスのブックメーカーであるラッドブロークスもレスターの優勝に対して300万ポンドを支払ったことを公開しています。
このようにレスターの奇跡ともいえる優勝は、ブックメーカーにとっては大悲劇となってしまったのです。
一方で、レスターにベットしていた人にとっては、予想外の大儲けのチャンスとなったのです。
レスターの奇跡の優勝から学んだブックメーカーは、オッズの設定方法に対して大幅な見直しをしました。2016/17シーズンのレスターの優勝に対しては、20倍~30倍という極めて現実的なオッズが設定されました。
この年に設定されたオッズの中でも最も高かったのは、ベットフォードがウエストブロミッチにつけた1750倍であり、レスター5000には到底及ばないオッズが設定されました。こちらもかなり高いオッズにはなりますが、この数字ではまだ赤字にはならないという許容範囲内でこの数字が設定されたと想定されています。
ここではレスター・シティ優勝時のメンバーを見ていきましょう。
ジェイミー・ヴァーディ:
ジェイミー・ヴァーディはレスター・シティを優勝に導いた選手。当時の活躍ぶりは多くの選手を魅了しました。これまでにアーセナルなど他のクラブチームへの移籍が噂されましたが、現在でもレスター・シティに所属しています。昨シーズンは23得点を決め、自身初のプレミアリーグ得点王を獲得しています。
岡崎慎司:
ジェイミー・ヴァーディと一緒に当時トップ選手として優勝に大きく貢献した岡崎慎司。2019年にレスター・シティを退団しており、その後スペインのラ・リーガに移籍しています。現在は、スペイン2部のウエスカで活躍しています。
カスパー・シュマイケル:
カスパー・シュマイケルは現在でもレスター・シティでプレイしています。当時はチームの守護神を務めており、現在はゲームキャプテンとして活躍しています。
ダニー・シンプソン:
ダニー・シンプソンは優勝時、右SBで優勝に貢献しました。18/19シーズンまで、5シーズンをレスター・シティで過ごしたのちレスター・シティを離れ、19/20シーズンからイングランド2部のハダースフィールドに加入。2020年の夏に退団し、現在では無所属となっています。
ロベルト・フート:
ロベルト・フートは、CBを務めレスター・シティの守備として活躍しました。まだ33歳という若い選手ですが、17/18シーズンいっぱいでレスター・シティを退団するとともに引退しています。
ウェズ・モーガン:
ウェズ・モーガンは、優勝時にチームキャプテンを務めていた選手です。2021年現在もレスター・シティでプレイしています。
クリスティアン・フクス:
クリスティアン・フクスも現在もレスター・シティでプレイしている選手の一人です。当時は左SBとして優勝に貢献しました。
ダニー・ドリンクウォーター:
ダニー・ドリンクウォーターはレスター・シティの優勝によってブレイクした人物の一人、2017年にレスター・シティを退団して以降、チェルシー、バーンリー、アストン・ヴィラなど複数のチームへの移籍を繰り返しています。
エンゴロ・カンテ:
エンゴロ・カンテもダニー・ドリンクウォーターと同じく、レスター・シティの奇跡の優勝によって一気に注目されるようになりました。エンゴロ・カンテは翌年にはすぐにチェルシーに移籍をし、2シーズン連続優勝という史上初の偉業達成に貢献しました。当時注目された選手の中でも現在最も活躍している選手の一人だといえるでしょう。
リヤド・マフレズ:
リヤド・マフレズはレスター・シティの優勝に貢献した後、2017年のアフリカ年間最優秀選手賞を受賞するなど活躍を見せています。2018年にマンチェスター・シティに移籍しており、現在でも主力選手として活躍しています。
マーク・オルブライトン:
マーク・オルブライトンは優勝時に左サイドでリーグ戦全試合に出場し、大活躍しました。現在はレギュラーではないもののまだレスター・シティに所属しており、チームに貢献しています。